それなりに規模の大きな大会だから、テレビの取材も来ている。

 一番注目が集まるのは当然優勝者のひかりだが、鏡華も準優勝としていくつか取材があったはずだ。

 ちょうどひかりがインタビューを受けているらしく、たくさんのカメラとマイクに囲まれている。その姿が、廊下にあるモニターにも映っていた。


「今の気持ちを一番に伝えたい方は誰ですか?」


 この質問は、前回の時も聞いた覚えがある。


『私をずっと支えてくれた家族。大切なお母さん。それと先生に感謝の気持ちを伝えたいです』


 確かひかりはそんな風に答えていた。

 その時はふーんとしか思わなかったが、前の時間軸でも母親に感謝を伝えているということは、ひかりの母親はちゃんとこのコンクールを見に来てくれたということだろう。素直によかったな、と思えた。


鏡華がモニターを見上げながら歩いていると、ひかりは前回と同じように話し出す。


「大切な家族……お母さんと、先生はもちろんですが」


 ひかりははにかんだように微笑み、それから顔を赤くして言葉を続ける。


「私のことを支えてくれた、大好きな鏡華ちゃんに感謝の気持ちを伝えたいです!」


 鏡華は驚いて、手に持っていたトロフィーを床に落とす。


「きょ、鏡華さん! トロフィー落ちましたよ!? 割れてないかな!?」


 愛梨が焦っているのを無視し、鏡華は口をぽかんと開いてモニターを凝視する。



 ……………………は?