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 コンクールはつつがなく進み、いよいよひかりの番になった。

 自分の演技が終わった鏡華は、舞台袖からひかりの演技を眺めていた。


 ひかりの様子は普段と違った。


 ケガの痛みのためか、途中で何度も失敗し、見るに堪えない演技を披露した。


 彼女の演技を楽しみにしていた観客も、失望の声を漏らす。

 ひかりは自分の力を発揮出来なかったことに絶望し、大声で泣きながら崩れ落ちた。





 ……ということには、ならなかった。残念ながら。

 鏡華は結局、ひかりの薬に手を加えず、そのまま元に戻したからだ。


 ――圧倒的だった。


 瞬きをするのも息をするのも忘れて、鏡華はひかりの踊りを見ていた。


 ケガをしているはずなのに、本来ならただ立っているだけで苦しいはずなのに、片足を軸にしてのパッセもピルエットも、ちっともぶれることがなく、完璧に金平糖の精の優雅さを披露した。


 鏡華も自分の持ちうる限りの力を使い、練習の時より数段素晴らしい踊りを披露した。

 それでも結局、結果は変わらなかった。