すると白露は大袈裟に驚いた声を出す。
「えっ、出来ないのですか? だってあなたは、そもそも彼女の靴に細工をするつもりでここに来たんでしょう? それと何が違うんですか?」
愛梨は白露の着物を無茶苦茶に引っ張って吠える。
「白露さんはどうしてそういうことを言うんですか!?」
「私はお客様の願いを遂行しようとしているだけですよ」
「鏡華さん、そんなことしちゃダメです! 鏡華さんだって、本当は分かっているんでしょう!?」
「そうね、分かってる」
鏡華は机に置かれていたひかりのポーチを開き、中に入っていたピルケースにゆっくりと手を伸ばした。
「鏡華さんっ!」
「……あたしは、ひかりに勝つためにここに来たのよ。そのためなら、どんなことだってする」
鏡華は手のひらの中にある薬の入ったケースを、じっと睨みつけた。