愛梨は懸命に説得している。


「白露さんは顔は怖いですし、話すことも怖いですけど、そんなに悪い人ではありませんから。安心してください!」


 なるほど、まったく安心出来ない。



 白露はその言葉に少し苛立った様子を見せつつ、説明を付け加えた。


「そうです。あなたに危害を加えるつもりは一切ありません。こちらは、あなたが一番後悔している時間に戻れる料理です」

「後悔している?」

「はい。もっと言えば、人生をやり直せる料理店」

「人生を、やり直せる……?」

「はい。あなたも、自分の人生のどこかをやり直したいと思って、この店に来店されたのではないですか? ここに訪れる方は、そういう人ばかりですから」



 和田は小動物のような目をしぱしぱと瞬かせ、白露をじっと見つめる。

 人生の中で、やり直したいと思った瞬間。


 もちろんある。


 むしろ一度もない人間の方が珍しいのではないか。

 失敗した経験、恥をかいたこと、後悔していること。

 出来ることなら、子供の時から全部やり直したいくらいだ。


 しかし、そんな魔法のような話があるものだろうか。

 にわかに信じられない。