ひかりの足首は、真っ赤に腫れ上がっている。少し動かしただけでも、痛みのためかひかりは辛そうに顔を歪めた。


「こんなに腫れてて。明日までに完治するのは不可能でしょ。コンクールに出られるわけないじゃない!」


そう言ってから、思わず口元を押さえた。


 いや、鏡華は知っている。

 この状態でも、ひかりはコンクールに出たのだ。そして優勝した。

 鏡華は自分の服の裾を、ちぎれるほど握り締めた。

 彼女の正面にしゃがみ、視線を合わせてきっぱりと言う。


「ひかり、明日のコンクール、辞退しなさい」


 ひかりは激しく首を横に振り、それを否定した。



「嫌。絶対に出る」

「無理よ。やめなさい」

「ダメなの!」

「どうして!? 今年は見送りなさいよ! コンクールなんて、来年も再来年もあるでしょう!? そりゃ、チャンスではあるけど……だけどあんたなら、他のもっと大きな大会でだって、優勝出来る! 今無理したら、一生踊れなくなるわよ!? 選手生命潰す気なの!?」


 肩で息をしながら、ほとんど無意識に叫んでいた。

 唇をかみ締めないと、思っていることが全部あふれてしまいそうになる。


 ひかりなら、たとえ来年でも再来年でも、トップになれる。今年だけ、今回だけ、あたしに勝ちを譲ってよ。どうしてそこまで明日のコンクールにこだわるの!?

 あたしはずっと、叶野さんに認めてもらうために踊っていたようなものなのに。

 下手したら一生影響が残るようなケガを抱えてまで踊るのに、あんたはどんな理由があるっていうの!?


 ひかりはそれでも頑なに訴えた。


「明日のコンクールじゃないとダメなの!」

「どうして!?」


 ひかりは今までに見せたことのない、不安げな顔で言った。