鏡華は高ぶっていた感情を沈め、汗を拭うと、深い溜め息をついた。


「とはいえ、今はまだ何もやんないわよ。冷静に考えなさいよ。今学校にいるの、あたしとひかりだけなんだから、何かしたらあたしがやったってバレバレでしょ」


 鏡華は床に落ちていたシューズを拾い直し、ひかりのロッカーにしまって扉を閉める。


「とりあえず、タイミングを窺うわ。今日一日あるんだから、どっかでチャンスがあるはずよ。ほら、あたしもレッスン用の服に着替えるから出て行ってよ」


 鏡華は白露と愛梨をロッカールームから追い出すと、扉に背中を預けた。

 愛梨の心配そうな視線が、不愉快だった。

 今さら迷ったって、どうしようもない。

 本当にこんなことをしていいのかなんて、ここに来るまでに何度も自分に問いかけた。

 それでもいいと決意して、自分は過去まで戻ってきたのだ。