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寮に戻ってからは特別なこともなさそうだったので、白露と愛梨は翌日の朝まで時間を飛ばした。
翌朝、今日もひかりは朝早くからレッスン室で練習をしていた。
そして、普段とは違うことが一つ。
今日はコンクールの前日なので、本番用の衣装を着て練習をする授業がある。
鏡華はいつものように、最初にロッカールームに向かった。周囲に誰もいないのを確認し、ひかりのロッカーを開いてみる。
彼女がいつもロッカーに鍵などかけていないのは知っていた。
本番用の衣装も、畳まれてそのまま中に置かれている。
不用心にもほどがある。
鏡華はひかりのトゥシューズを手に取り、無言で見つめる。
突然背後から、何かぞわりとする気配を感じた。
驚いて振り返ると、白露が真後ろに立っていた。
白露は笑っていたが、その表情の冷たさに、全身が凍り付く。
「靴に細工をするなら、今ですね」
それを聞いた愛梨が、焦ったように問いかけてくる。
「鏡華さん、本当にいいんですか?」
「……いいに決まってるでしょ。そのためにここに来たのよ」
「でも鏡華さんは、今まで一生懸命練習していたじゃないですか。だから、その、細工なんてしないで、もっと……」
心配そうな様子の愛梨を振り払い、鏡華は声を荒げる。
「うるさいわね! それでも勝てないのよ!」
握っていたシューズを床に投げ捨て、鏡華は叫んだ。
「あたしがどれだけ苦しい思いをして、足がちぎれるほど練習したって、ひかりには勝てないのよ! こうするしかないじゃない!」
「鏡華さん……」
寮に戻ってからは特別なこともなさそうだったので、白露と愛梨は翌日の朝まで時間を飛ばした。
翌朝、今日もひかりは朝早くからレッスン室で練習をしていた。
そして、普段とは違うことが一つ。
今日はコンクールの前日なので、本番用の衣装を着て練習をする授業がある。
鏡華はいつものように、最初にロッカールームに向かった。周囲に誰もいないのを確認し、ひかりのロッカーを開いてみる。
彼女がいつもロッカーに鍵などかけていないのは知っていた。
本番用の衣装も、畳まれてそのまま中に置かれている。
不用心にもほどがある。
鏡華はひかりのトゥシューズを手に取り、無言で見つめる。
突然背後から、何かぞわりとする気配を感じた。
驚いて振り返ると、白露が真後ろに立っていた。
白露は笑っていたが、その表情の冷たさに、全身が凍り付く。
「靴に細工をするなら、今ですね」
それを聞いた愛梨が、焦ったように問いかけてくる。
「鏡華さん、本当にいいんですか?」
「……いいに決まってるでしょ。そのためにここに来たのよ」
「でも鏡華さんは、今まで一生懸命練習していたじゃないですか。だから、その、細工なんてしないで、もっと……」
心配そうな様子の愛梨を振り払い、鏡華は声を荒げる。
「うるさいわね! それでも勝てないのよ!」
握っていたシューズを床に投げ捨て、鏡華は叫んだ。
「あたしがどれだけ苦しい思いをして、足がちぎれるほど練習したって、ひかりには勝てないのよ! こうするしかないじゃない!」
「鏡華さん……」