「そうね」


 ひかりは結局何を言おうとしたのか?

 何回考えても、絶対に彼女の言葉の続きは分からない気がした。理解不能な生き物なのだ。

 ひかりは完全にパフェに夢中になっている。

 下からありがたいものを拝むように眺めながら、長いスプーンをしっかりと右手に握った。


「フルーツ、何種類乗ってるのかな? 桃でしょ、マンゴーでしょ、あとリンゴとキウイにマスカットにメロンでしょ、これは何だろう? 苺……あ、ちょっと甘酸っぱい」

「ラズベリーよ。見たら分かるじゃない」

「ラズベリー! そう、ラズベリー! そっかぁ、だから苺より酸っぱいんだー。うーん、おいしいっ!」

「いいから黙って食べなさい」


 ひかりは驚異的な速さでスプーンをすすめながら、時折幸せそうに頬を押さえ、感動したように動きを止める。


「はぁ~、アイスの中にもフルーツのペーストが入ってるんだね。

新鮮なミルクを使ったアイスの濃厚な味わいと、フルーツのシャキッとした食感が最高だね~! どのフルーツも主役級に味を主張するんだけど、きちんと調和も取れてて、互いを引き立て合う……まさにフルーツの宝石箱だぁ~!」

「食レポ!?」

「すっごくおいしい~! 生きててよかった~」

「そこまで?」

「鏡華ちゃんはメロン好き? 意外とメロンって好きじゃないって人いるよね。ちなみに私は大好き!」


 ……相槌をうつのも疲れる。

 ものの数分でパフェを完食すると、ひかりは向かいの席で幸せそうに鏡華を眺める。

 居心地が悪くて、鏡華は眉をひそめた。


「……あたしまだ時間かかるから、先に帰ってもいいわよ」

「ううん。大丈夫、鏡華ちゃんのこと待ってる!」


 何がそんなに嬉しいのか、ひかりは始終幸せそうに笑っていた。


 会計を済ませて店を出ると、さっきまでの雨が嘘だったかのように、清々しい青空が広がっていた。

 ひかりは踊るように道路の上をくるくると回り、青い空を仰ぐ。


「来てよかったね。すっごくおいしかったね。鏡華ちゃん、また一緒に来ようね! じゃあ、寮まで一緒に帰ろう!」