「鏡華さん? 大丈夫ですか?」


 考えにふけっていた鏡華は、愛梨の声ではっと現実に意識を戻す。 


「何でもないわ。ちょっとぼーっとしてただけ。ていうか、寝る。明日も早いし」

「あ、そうですよね。おやすみなさい、鏡華さん」


 愛梨が部屋から出て行ったのを見送ると、鏡華は目を閉じ、余計な考えを振り払う。

 とにかく今は、自分の出来ることを。

 ひかりに勝つことだけを、考えよう。

 そのためにわざわざ、時間まで遡って、ここに来たのだ。


 ひかりに勝つ。どんな手を使っても。

 たとえそれが後ろ向きな心構えだったとしても、ただそれだけが、鏡華を前に進ませる原動力だった。