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一限目のテストが終わると、二限目にはバレエのレッスンが始まった。
やはりバレエの学校だけあって、通常の授業より多めにバレエを学ぶ時間が取られているようだ。
鏡華はテストの問題を解いていた時と比べ、明らかに生き生きとした表情に変化した。
レッスン室にいる少女たちを目にすると、愛梨はきゃあきゃあとはしゃいだ。
「すごい、本当にバレエの学校なんですね!」
「そうよ。日本で唯一の、バレエを学ぶことが生活の主となる、小中一貫校。朝から晩まで、みっちりバレエ漬けの生活よ」
レッスンが始まると、愛梨はずっと拍手しながらその様子に見入っていた。
「うわわわわわ、みんな顔ちっちゃーい! スタイルいい! 手足細い! うわっ、身体やわらかーい!」
鏡華は鬼のような目で愛梨を睨み、小声で注意する。
「うるさいわね。気が散るわ!」
「ごめんなさい。でもすごい。皆さん才能に溢れている感じですね」
鏡華は自信ありげに胸をそらしながら呟く。
「当然。何百倍という競争率を勝ち抜いて入学した、エリートしかいない学校よ。あたしももちろん、その一人だけど」
それから熱心にレッスンする少女たちを一瞥し、鏡華は愛梨にぼそりと問いかける。
「やっぱりここでもあなたたちのことは見えないのね。しかも鏡にも映ってない。何だか変な感じ」
白露はにこにこしながら穏やかに言った。
「はい、鏡華さんにしか私たちの姿は見えません。なのでどうぞお気にせず、私たちは影のようなものだと思ってください」
その言葉に、鏡華はふんとそっぽを向く。
「こんな存在がうるさい影がいてたまるもんですか」
足を開脚し、床にぺたりと上半身をつける鏡華を見て、愛梨はキラキラと瞳を輝かせる。
「身体、やわらかいんですね」
「当ったり前でしょ。柔軟性がないと、バレリーナはつとまらないわ」
それからも愛梨は鏡華が何かする度に、わーわー歓声をあげながらレッスンを見学していた。
愛梨が騒いでいるのがうるさかったのか、鏡華は鬼のように目をつり上げ、釘をさした。
「近くで騒がれると集中出来ないから、しばらく黙ってなさい!」
鏡華の目は、これ以上邪魔をすると本気で外に叩き出すと物語っていた。
「はいっ、すみませんでした!」
授業中とはまるで別人だ。鏡華の真剣さを感じ取り、反省した愛梨は大人しく壁際に座る。それからレッスンが終了するまでの二時間、じっと鏡華の姿を眺めていた。
ちなみに白露は序盤で逃亡した。