レッスン室は、明るく日当たりがいい部屋だった。
扉を開くと、昇りたての陽光が床にキラキラと反射していた。壁には大きな鏡が埋め込まれている。
広いレッスン室の中には、一人先客がいた。
鍵を自由に使う許可を持っているのは、この学校でも特別優秀な生徒だけ。
そしてこの部屋を利用するのは、たいてい鏡華か彼女だ。
彼女は鏡に向かって、熱心に自分の姿勢を確認している。
そして背後に映る鏡華の姿に気が付くと、太陽のような眩しい笑みを作った。
「おはよう、鏡華ちゃん。今日は私が先だったね」
「そうね」
愛梨はその少女を見て、まるで妖精のような子だな、と溜め息を漏らした。
真っ白な肌、バランスのいいしなやかな身体。生き生きとしたすこし垂れ目がちの大きな瞳と、栗色の柔らかそうな髪の毛。
説明されずとも分かる。間違いなく、彼女が東堂ひかりだろう。
鏡華はひかりから離れた場所に立つと、さっそく自主練習を始めた。
それから授業が始まる時間まで、二人は一言も話さず、黙々と自分の練習を続けた。