鏡華の口元が嬉しそうに緩む。
甘い物が好きなのだろう。
それ以上の感想は言わなかったが、彼女の表情から味に満足していることが伝わって来た。
グラスが空っぽになるまでパフェを堪能した鏡華は、遠い昔を思い出すように目を細める。
「誰にどんな風に思われてもいいわ。あたしはひかりに勝てるのなら、どんな手段を使ったって、構わないの」
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鏡華がストイックなのは当然である。
鏡華は名門のバレエ学校に在籍している。
日本で唯一の、プロのバレリーナ育成に重きを置いた小中一貫校だ。
将来プロのバレエダンサーになるため、日本中の少女から入学願書が殺到する。
しかも鏡華が在籍しているのは、そのバレエ学校の中でも難易度の高い、特別クラスだ。
何百何千という応募があるが、たった数人の優秀な少女しか特別クラスに在籍することは許されない。
厳しいオーディションをくぐり抜けて入学したその裏には、鏡華の血の滲むような努力があった。
鏡華は幼い頃から、とにかく負けず嫌いな少女だった。
鏡華の信条は、人の五倍努力することだった。
五倍努力して敵わない相手がいるのなら、さらに十倍努力する。
ひかりに勝つためにどんな手段でも使うと語った鏡華だが、鏡華はこれまで決して卑怯な手を使ったことなどなかった。
むしろバレエに関しては、他の誰よりも不正や不実を嫌う、生真面目な性格だったと言ってもいい。
三歳の時にバレエを始めてから、鏡華はずっと一番だった。
最初に通っていたバレエスクールでも、鏡華より上手にピルエット(爪先立ちで回転すること)が出来る人間なんて、一人もいなかった。
鏡華の周囲には、いつも羨望の眼差しを向ける少女たちが集まった。
「鏡華ちゃんは、どうしてそんなにバレエが上手なの?」
そう聞かれる度、鏡華の答えは決まっていた。
「上手いのは当然でしょ。あたしが天才だからよ!」