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モリスの言っていた通り、サウランと王都間の人通りが多くなった。

比例するように泊まりにくるお客様も増えていた。

だんだんと口コミ成果が現れ始めたようで、最近は呼び込みをしなくても、次々とお客様がやって来る。

八部屋全てが埋まるのが、普通になって来ていて、予想以上に好調な成長に、皆喜んでますますやる気は上がっていた。

屋根の設置も完了した。
全てを覆ってしまうと、綺麗な空が見えなくなってしまうので、湯船の半分だけの広さにした。

工事のついでに、ライに井戸の冷たい水を引いてくる水路を作って貰った。

温泉の隣にひんやりとした水場を作ったのだ。

暑くなった時に涼んだりと、結構重宝すると思って。

それから、宿から温泉までの通路を綺麗に整えた。
足元が危なくない様に、仄かな明度の照明も設置する。

清潔感を出すため通路に撒いた白の小石に、橙色の灯りが差し、とても美しい光景になった。

出来上がりを見たライは、感心した様に言った。

「通路を飾るなんて無駄と思ったけど、やってみるといいものだな」

ライはそんな事に私の私財を使うのは無駄と反対していたのだけど、反対を押し切っただけに認めてもらうと嬉しい。

「温泉は肌で楽しむだけでなく、目でも楽しまなくちゃ。贅沢に飾り付けることによって、特別感も出るし、やって損はないと思う。ライにも気に入って貰えたみたいでよかったわ」