たった一日だけど、久しぶりの雨が降った事で、ランカ村の水不足もほんの少し緩和されたそうだ。
ミント村の皆も喜んでいる。

ただ、コンラードとライは手放しで喜んでなく、複雑な表情だった。

私の今回の雨の予報が、【精霊の加護】によるものだと考えているからだ。

精霊の加護の力は生まれついてのもの。

長年の訓練で、元ある力が少しずつ強くなる事はあっても、新たな力を会得する事はない。

私の場合、地中の水源を探ったり、雨雲を察知したりする事が、水を感じる力の一つと言えない事もないけれど、あまりに短期間で、しかも訓練も無しに成長しているのがおかしいと言う。

そんな事から仮説が立った。

私は、他の人の数倍の温泉効果を得ていて、精霊の加護の力が上がったのは、【心身の調子を整える】効果が作用しているのではないか。

なぜ、私だけ効果が高いのかと言えば、【水を感じる力】があるから。

温泉の効果も余す事なく感じ取り有効活用しているのだ。

つまり私は温泉に入れば入るほどハイスペックになっていく。

なんて素晴らしい効果と喜びたいところなのだけれど、コンラードとライは副作用をとても心配していた。

簡単に能力を得た代償は本当に無いのかと。

前例のない事なので、分からない。だから、用心の為、私の入浴は制限された。
その間、ふたりはもっと温泉について調べるとのこと。

残念だったけれど、私も少しだけ不安を覚えていたので従った。



温泉には入れなくなったけれど、宿のオープンの為の準備と、新たな温泉探しは進めていた。


その為に、水脈を探す訓練を続けていた。

方法としては、いつ脱力しても良いように、館の庭に立ち地中を探る。それだけ。何度もやれば慣れるかと思って。

自分の足元から円が広がっていく感覚。
感じるのはひんやりした流れ、温かい流れ。
はっきりした場所を知りたくて感覚を研ぎ澄ます。

集中していると、突然目の前が暗くなりひっくり返りそうになる。


その度にライに抱えられて部屋に運び込まれる事を繰り返し、そして、何度目かのチャレンジでようやく、新たな温泉ポイントを発見したのだった。