ラナとおしゃべりをしながらの入浴だったので、いつもよりも長く入っていたようだ。

離れた所で見張りに立っていたライの声が聞こえて来た。

「お嬢様、そろそろ交代をお願いします」

「今、出るわ」

今日は調査に来たのだから、のんびりしている場合じゃなかった。

急ぎ上がり身支度をしてライ達男性陣と交代。
私とラナの見張りでは心許ないので、用心に音のなる木の実を撒いておく。

これでいきなり襲われる事はないでしょう。

お風呂上がりのお手入れをしながら待つ事しばらく。
血色の良い顔をした四人が戻って来た。

「どうだった?」

感想を聞くと、護衛のふたりが珍しく語り始めた。

「最高っすよ! 水浴びとは全然違う。なんて言うか身体に染み込んで来るんですよね。疲れがふっとびました」
「俺は腕の痛みが嘘みたいになくなりました。ただの打撲では有ったんだけどこんかに急に治るなんて驚きです」

熱く語るふたりに、私はうんうんと頷きながら頭の中でメモを取る。

「疲労回復に、痛みの緩和ね……感想ありがとう。他に気付いた事が有ったら教えてね」

「はい、お嬢様」

「コンラードとライはどう?」

残りのふたりに問いかけると、まずはコンラードが口を開いた。

「聞いていた通り、様々な効能があるようです。私が特に変化を感じたのは、頭です」

「頭?」

「はい。とてもスッキリとしました。仕事が捗りそうです」

疲労回復効果が脳に作用したと言うことか。

「ライは?」

「俺は二度目だし、良い所はもう出ているので気になった事を。まず、長く入っていると水分不足になりそうだと思った。お湯に浸かるのは快適だけれど、そのせいで眠くなる事もあると思う。その辺を注意しないと事故が起きそうだ」
「そうね」

私は内心感心しながら相槌を打った。
ライの言った事は、温泉施設を作るのにあたって気を使わなくてはいけない事。それなりに対策を考えていた。
だけど、私は前世の知識があるから思いついただけで、まっさらな状態だったら気付けていないと思う。

ライの洞察力は大したものだわ。

「館に戻ったら、問題点を書き出して対策を考えましょう」

荷物を纏めて館へと出発した。