「そ、そんな事ってあるんだ……風の力ってどういうものだったの?」

「詳しくは分からない。あまり人前で力を使うことは無かったそうだから」

「記憶の一部が無いって言ってたけど、日常生活で困る事は無かったの?」

「特に無いな。育ての親の事も覚えていたし、それまでに学んだ事も忘れてなかった。だからサウラン辺境伯領に留学出来た」

「そうなんだ……」

つまり、ライの失った記憶は【精霊の加護】に関する事に限られると言う事?

なんだか違和感を覚えた。事故に遭って頭を打ったとしても、それだけ限定で忘れる事があるのだろうか。

ライは貴族では無いと言うけれど、【精霊の加護】がある事から、先祖に王侯貴族が居たのは間違いない。
他人には言えない複雑な事情を抱えていて、追求を逃れる為に記憶が無いと言っている?

そんな考えが浮かんだけれど、それをライに確認するのは止める事にした。
誰にだって言いたく無い事はあるし、秘密にされる事で私が被害を被る訳でもない。

無理強いは良くないものね。

でも、ライの風の力がどんなものなのか気になる。

私みたいに風の成分が分かるとか?……いや、ライの持つ雰囲気からもっと役に立つ強力な力のイメージがあるのだけれど……。