少し凹んでいると、ライの固い声が聞こえて来た。

「エリカ、上がれ。誰かが来る」
「えっ？」

急ぎ、天然のお風呂から上がり、用意していたワンピースを頭から被る。
手早く身繕いをしていると、私にも微かな足音が聞こえて来た。

足音は複数。多分、三人か四人くらい。

やがて樹々の間から現れたのは、予想した通り四人の見知らぬ男性達だった。

四人の年齢はバラバラに見えた。

一番先頭のがっしりとした体格の男性は四十をいくつか超えたくらい。
その直ぐ後ろに着くのは、更に年上のように見える。
残りのふたりは、ライと同年代の若者だった。


「……私以外に温泉に興味がある人がいるのかしら」

思わず首を傾げる。

この世界に湯船に浸かる習慣はない。

ライがそうだったように、若干匂いがあって温かい源泉は、飲用としても敬遠されている。

だから、もし源泉の存在に気付いても放っておく事が殆どだ。

けれど、男性達は真っ直ぐに私の居る岩場に向かって来ている。

「手ぶらで大丈夫なのかしらね？」

「何呑気な事言ってるんだよ、支度は出来たか？」

いつの間にか隣に来ていたライが言う。