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ミント村に到着すると、私はライを領主館へ案内した。
彼は農作業の手伝いをして賃金を得たいようだったけれど、考えてみれば誰に紹介すればいいのか判断がつかない。

その為、まずはミント村を取り仕切っているコンラードに相談する事にした。
彼は村人からの信用もあるし、頭もいい。
こんな辺境の村に留まっているのが不思議なくらいの、頼りになる家人だ。

領主館の玄関ホールで出迎えてくれたコンラードは、ライを見ると珍しく驚いた顔をした。

私はライの事を問われる前に、彼を紹介した。

「コンラード、彼はライと言うの。サウラン辺境伯様の都で勉強していたけれど、事情が有って故郷に帰るところだそうよ。でも手持ちのお金が足りないからしばらくここで働きたいそうなの。何か仕事を紹介してあげてくれない?」

「サウラン辺境伯領で……?」

私の説明を聞いたコンラードは、訝しげに眉をひそめライを見つめた。

まるで値踏みするようなその眼差しは、直ぐに作ったような笑顔に変わった。

「事情は分かりました。この村は慢性的に人手が足りていないので、労働力は歓迎するところです」