今の私は一度凹むと際限がなく沈んでいく。
意識して前向きでいないと駄目なのだ。

気持ちを切り替えないと。
そう、良い事だってあった。

地下から湧き出るこの源泉には、危険な成分は含まれていないから、お風呂として問題なく使える。これはとても嬉しかった。


トレヴイア王国の入浴事情は、部屋に備え付けの浴槽に緩いお湯を運び入れ貯め、それを使って身を清めるというもの。

衛生的な観点から見れば問題ない。
だけど、前世の記憶を思い出してから、私はゆっくりお湯に浸かりたいという気持ちを持っていた。

のんびりお湯に浸かって、身体を休める。
冷たい飲み物なんかがあれば更に良いかも。
だけど、それを用意する為のお湯と労力を考えると、実際にそんな贅沢な事が出来るはずもないから諦めていた。

「ここだったら遠慮せずにお湯を使える」

それに、源泉には【肌を綺麗にする効果】と【疲れを癒す効果】それから【心身の調子を調える効果】があるようだった。

私にはうってつけの効能だ。
そう思うと温泉欲が抑えられなくなった。

私は岩場の影になるポイントに行きショートブーツを脱ぐと、そうっと足を入れてみた。

温かくて気持ち良い!
気分が良くなり、岩場に座り両足を浸してみる。

ほわんとした温かさがじわじわと染み込んで来る。