ここでできない電話ってことは、彼女からだよね。

夕方に見かけたヒロの隣にいた女性は本当に綺麗だった。


きっと年上の人だと思うけど、艶っぽさが離れて見ていた私にも伝わってきて、自分がひどく子どもに思えた。

そんな気持ちが芽生えてからは、ヒロはああいう人がタイプなんだなとか、考えなくてもいいことばかりグルグルと思ってる。


「サユちゃん」

ハッと気づくと、奏介くんが目の前にいた。


「ヒロが戻ってくるまで座って待ってよう」と、砂浜に腰を下ろして、私も続くようにお尻をつける。

奏介くんとふたりきりの空間に心臓が無意識に速くなってしまった。ヒロがいる時は大丈夫なのに、いなくなると急に不安になるだなんて、本当に私は子どもみたいだ。


「サユちゃんさ、ヒロのこと気になってるでしょ?」

前触れもなく言われた言葉に、今は別の意味で心臓が大変なことになっている。


「え、な、なんで……?」

もっと冷静に返さなきゃいけないところを、私の動揺は隠せないほど声や顔に表れていた。


「分かりやすいなー」

奏介くんにクスリと笑われてしまった。


たしかにヒロのことは気になっている。あれだけ男という生き物に拒絶反応が出てたのに、ヒロの大きな身体や背中を無意識に目で追ってしまう。

だって触れられて怖いと思わなかったのも、自分から触れることができたのも、ヒロが初めてだったから。


「で、でも、気になると言っても全然奏介くんが思ってる感じじゃないですよ。ヒロには付き合ってる人がいるし」

そう、別にこれは恋愛感情じゃない。