安城西高のボランティア部といえば市内では名前が知られている。
地域の行事に積極的に参加し、あまりに様々な活動をしてきたおかげで一部では「ボランティア部」ではなく「なんでも屋」と呼ばれているほど。
頼られていると思えばその呼び名も悪くはなく、地元の人たちの依頼を受け活動することも多くあった。
今だっていくつかの行事への参加が決まっていて、部員それぞれで役割を分担し励んでいる。

ただ、やってみないと楽しさが伝わりにくいのもあるのか、地域からの人気はあっても校内での人気はあまりなく、全盛期に比べれば部員が激減しているのは確かだった。
加えて、県内屈指の進学校として名が通っているうちの学校は文武両道の校訓に倣い運動部には力を入れているものの、規模の小さい文化部の扱いは以前からあまりよろしくない。
そのため文化部全体が部員の確保、そして活動場所の確保に常に悩まされていた。

「廃部の理由って、やっぱり人数不足ですか?」

その質問に、今度は先生ではなくマサムネ先輩が答えた。

「それもある。廃部の話自体は前からあって、最近新しい部活も増えてるから、うちみたいに人数少ないところはなくしていく方向らしい。でも、なんだかんだ毎年新入部員は入っているし、ボラ部は地域の人たちから人気があるってことで一応廃部は免れていたんだけど」
「だったらなんで今ごろ?」
「一番の原因は、ここ」

マサムネ先輩が下を指さす。みんなが一斉に床を見たけれど、マサムネ先輩が示したかったのは床ではなく、わたしたちが今いる場所のことだった。
面積の半分以上が物置と化しているため、残りの狭い空間にぎゅっと置かれたささくれ立った机と椅子。
落書きもある色の禿げた木の床に、染みが多いひび割れている壁と天井。