「由!探したよー。
あれ?なんか由の顔赤くない?」
さすが親友。
リアル心の友。
うん、鋭い……。
「なんでもないよ?気のせい気のせい」
「ふーん?」
ああ、これは多分。
ダメなやつ。
あれ?
いいやつなのかな??
だって、季節はもう春。
春は、始まりの季節。
かえちゃんも彼氏さんと新たな気持ちで再スタートを切った。
いっちゃんも引越しして、お姉ちゃんと一緒に新しい命を迎える準備をしている。
だから。
私も。
きっと。
何かが始まる。
だって春だもん。
始めるんだ。
終わりの季節は終わった。
まだ少し痛いけど、この痛みと一緒に進んでいこう。
その先にはきっと……。
希望に満ちた明るい未来が待っている。
新学期が落ち着いた頃。
私は初めていっちゃんとお姉ちゃんの新居を訪ねた。
右手には新学期からのクラスメイトに教えてもらった流行りのスイーツを持っている。
「騙されたと思って試してみてって」
言われて、連れていかれて、自分のお財布で買わされて。
そうして食べたそのお店のマドレーヌは私のスイーツ史上最高の美味しさだった。
その最高マドレーヌを持って訪れたいっちゃんとお姉ちゃんの新居。
その新居で一番明るく暖かい場所には小さな木製のベッドが置かれていた。
そのベッドの上には小さなハッピーが三つ。
あの日に私が手渡したくまさんが並んでいた。
大きいくまさんはいっちゃん。
中くらいのくまさんはお姉ちゃん。
小さいくまさんは可愛いベビーちゃん。
仲良く寄り添う三つのくまさんはまさにハッピーの塊だ。
受験勉強に追われる由の前に現れたのは、顔も声もどタイプの家庭教師さん。
優しい彼に由はすぐに恋に落ちる。
大好きな彼との受験勉強は捗った。
お陰で受験も第一志望にきっちり合格。
そんな何もかも順調な中で聞こえた言葉は、
「俺、彼女いるんだ」
それでも彼を諦めることはできないものだった。
新しく始まった高校での生活。
変化を見せない彼との関係。
ずっといまのまま、曖昧な幸せが続くと思っていた由の身に降りかかったのは……。
絶望に満ちた失意の世界だった。
たった一度の初恋の中で学ぶ
喜び、幸せ、悲しみ、怒り。
本作はその全てを未来のために吸収していく由の成長ストーリーとなっております。