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いっちゃんの甘えた声が可愛くて。
大切で。
大丈夫って。
私が伝えるからって。
いっちゃんは受け取ってくれたらそれでいいからって。
この人になら全部をあげられるって。
何も残らなくていいって。
全てこの人のものになって欲しいって。
そう、思ったんだ。
ーーー
とまあ、こんな感じ。
私はいっちゃんに一目惚れ。
うん。
確かにね。
第一に好きになったのは外見だよ?
でもね?
だけどね?
ちゃんと知ってるの。
いっちゃんのいいところも。
尊敬できるところも。
可愛いところも。
格好いいところも。
弱いところも。
臆病なところも。
もの凄く、ドがつくほどのヘタレ具合も。
それでもやっぱり、いっちゃんが好き。
どんないっちゃんも大好き。
きっと彼は弱い人なのだ。
一人で生きていくには優しすぎる人なんだ。
誰かが一緒にいてあげないとだめんなんだ。
そう思うと、彼の側面の分だけ。
いろんな形の好きが溢れて止まらないんだ。
「すっごいご馳走!」
変態、じゃなかった!
愛しのいっちゃん!
が、テーブルに並んだ食事を見て感嘆の声を漏らす。
当然だ。
今日は時間がないながらも頑張った。
張り切った。
それはいままでなんて比じゃないくらいに愛を込めた。
「今日はね。折角だから」
ふふ。
いっちゃんの不思議そうな顔。
可愛いなぁ。
いますぐに抱きついてしまいたい。
けどー
「ほら、いっちゃん!いつまで突っ立ってるの?
ほらほら、上着を脱いで。手を洗って。
ホカホカなうちに食べようよ」
「だな!」
いっちゃんが片付けをしている間に飲み物を準備。
本当ならお洒落にシャンパン♡とかしたいけど。
私は未成年だし。
そもそもこのメニューに合うお酒も分からないし。
仕方がないから麦茶で我慢。
それでも今日の食卓は豪勢なのだから我ながら惚れ惚れする。
「お待たせー。腹減ったー」
「ね!ね!私も!取り敢えず食べよう?
はい。手を合わせて、」
「「いただきまーす」」
やばい。
泣きそう。
これって夢にまで見た憧れの同棲みたい。
って言うか家族!
これはもう家族なんじゃないかな?
「うっまー!」
「今日はいつも以上に丁寧に作ったからね!
味は私が保証する!」
「由さん格好いいー!素敵!イケメン!結婚して!」
「っ!!」
噴火直前の火山のような私の顔に気づきもせず、天然タラシ系男子は黙々と料理を食べすすめる。
スープカップを持ち上げるその裾は萌え袖。
息を吐きかける口元は小さく窄められ。
一口飲めば
「あっつ!」
と声を漏らす。
完璧か!
お主はどこぞのイケ女ですか!
「由さん?」
なんて悶える私の名を呼ぶのはいっちゃんだ。
「あれ?由さん?」
「はいはい!聞こえてる!聞こえてるって!」
my劇場を悟られないよう、手でパタパタと追い払う。
「顔、真っ赤だよ?大丈夫?暑い?それとも発熱?」
「あー、」
そうだった。
私の脳内は満開の花畑。
それも咲いているのはアザミ。
その可愛らしさに油断して手を伸ばせば隠れた棘にたちまちやられる。
で、問題はここ!
私の顔!
最初よりはだいぶマシだけどまあ、赤い。
「まあ、これは気にしないでいいよ。
風邪でも発熱でもないから!」
「そう?寒くなったから体調には気をつけろよ?」
「ありがとう」
あーあ。
こういうところ本当にイケメン。
その整った顔で真剣にそんなこと言われたらさ。
そりゃあ、好きにもなるよね?
不可抗力だよね?
「そうだ!由さん!」
「はい!」
いっちゃんの勢いに私は思わず背筋を伸ばす。
「いつものお礼にさ、今度お出掛けしようよ!」
「それって!」
デート!?