日々これ好日。

新鮮でやりがいがあって、楽しい。

ローマは一日にしては成らないのだ。とにかく頑張ろう。


「なんでもやります!」

「おっ、その意気」


今さらながら、ビアグラスをぶつけ合って威勢よく乾杯した。


* * *


「桃って文学部?」

「はい」


執務室のPCを叩きながら、久人さんは「やっぱり」と呟く。


「やっぱりってなんですか」

「よく文庫本読んでるし、文学少女っぽいじゃない」

「文学部じゃなくたって本は読みますし、久人さんだってしょっちゅう読んでらっしゃるじゃないですか」

「俺が読んでるのは物語じゃないもん。あーダメだ、終わんない!」


パチパチッとやけくそのようにキーを叩くと、久人さんは伸びをした。上着を脱いだベスト姿で、うーんと両手を遠くに投げ出している。


「桃、終電大丈夫?」

「はい、もう少し」

「ごめんね、付き合わせて」


今久人さんが追われているのは、先日依頼された件に対する提案書だ。当初は余裕のある日程で返答の予定を組んでいたのだけど、突然、前倒してほしいと要望が来た。

聞けば、先方の会社に、本国から突然視察が入ることになったとのこと。その場で経営立て直しの見通しについて問われる可能性が高いと言うのだ。


『見通しが立ってなかったら、即本国から干渉を受けるでしょ。あそこ、海外の資本が入ったばかりだからね、外資のノリでテコ入れされたら、絶対についていけない社員が出てくる。数字だけ回復しても、組織が摩耗しちゃうよ』


久人さんは同情的にそう言い、こちらのスケジュールを合わせると決めた。

というわけでついさっきまでプロジェクトメンバーも残って支援のプランをいくつも立てては話し合い、潰し、採用し、修正し、と会話を重ねていた。