「大丈夫?」

「はい」

「どうだった?」


はにかんで尋ねる様子には、彼らしい自信と優しさと、素直な不安も少しだけ垣間見えて、かわいい。

濡れた前髪をかき上げてあげると、目を細めてその手に懐いてくる。


「私、絶対に浮気しないと思います」

「えっ、いきなり不吉なワード出すね」

「こんなこと、本当に好きな人とじゃなきゃ、できません」


たぶん無意識に、久人さんは私の脚を手でさすっている。ずっと上げっぱなしで、力みを逃がす余裕もなかった脚は攣る寸前で、彼は鋭く、それを察したに違いない。

私の言葉をじっくり噛みしめるように、彼は何度か脚のつけねから膝頭まで、温かい手のひらを往復させ、それから手を止めて、にこっと微笑んだ。


「いっぱいしようね」


うなずく私の頬を、愛しげに両手で挟む。

鼻先に、唇にキスを落とし、「なんでも教えてあげる」と機嫌よく言った。


「なんでもって、なんですか?」

「桃がどのへんで気持ちよくなるのか、とか」


あ、そういうの?


「教わるものですか?」

「男が教えてあげなきゃ、女の子は気づかないままだよ」


肌の表面に汗を残したまま、久人さんの身体の熱が、徐々に引いてくるのがわかる。腕全体でそれを感じる。


「人によって、そんなに違うものですか?」

「え? うん、まあ、けっこう違うと思う…けど」


なぜか久人さんは急に口ごもり、はっきりしない。