今日は、いつもと逆。私があなたを抱きしめますね。
ふと、久人さんの眉間に力が入った。夢の中でも頭を使っているのかもしれない。頭をなでてあげると、ふっとそれが和らぐ。
私がいると、ちょっと気持ちがくつろぐとか、肩の力が抜けるとか。
いつかそう思ってもらえるようになりたい。
私、がんばります。
* * *
「来るなら来るって言ってくださいよ、樹生さん」
「おー、次原だ、久しぶり、元気?」
鬱陶しそうな表情を隠さない次原さんの背中を、樹生さんがバンバンと叩く。執務室の久人さんのデスクに腰をかけ、我が物顔だ。
「この間、電話で話したでしょ」
「なんだよ、態度悪いなー」
「だから、来るなら来るって…今忙しいんですよ、この会社、わかるでしょ」
「来るってちゃんと言ったよ、桃子ちゃんに」
指さされ、私は、「申し訳ありません」と次原さんに頭を下げた。まさかあのメッセージがアポの代わりだとは思っていなかったため、なんの社内調整もしていなかったのだ。
樹生さんは突然受付に現れ、『高塚です、次原呼んで』と受付担当に内線で申しつけ、一瞬社内を混乱させた。その彼が、「冗談冗談」と私に手を振る。
「もとはと言えば、悪いのは久人なんだから」
「俺がなんだって?」
そこへちょうど、久人さん当人が帰ってきた。
あまり寝ていないせいで、少し疲れて見えるほかは、普段と変わらない。さっそうと室内に入ってきて、デスクを回り込む。
「妻を振り回して、悪い夫だなって話だよ」
「俺も桃に振り回されてるし、おあいこ」
えー!
久人さんは引き出しからファイルを取り出すと、中をさっと確認して閉じ、そばでショックを受けている私ににっと笑いかけ、また出ていった。
本当に忙しいのだ。
ふと、久人さんの眉間に力が入った。夢の中でも頭を使っているのかもしれない。頭をなでてあげると、ふっとそれが和らぐ。
私がいると、ちょっと気持ちがくつろぐとか、肩の力が抜けるとか。
いつかそう思ってもらえるようになりたい。
私、がんばります。
* * *
「来るなら来るって言ってくださいよ、樹生さん」
「おー、次原だ、久しぶり、元気?」
鬱陶しそうな表情を隠さない次原さんの背中を、樹生さんがバンバンと叩く。執務室の久人さんのデスクに腰をかけ、我が物顔だ。
「この間、電話で話したでしょ」
「なんだよ、態度悪いなー」
「だから、来るなら来るって…今忙しいんですよ、この会社、わかるでしょ」
「来るってちゃんと言ったよ、桃子ちゃんに」
指さされ、私は、「申し訳ありません」と次原さんに頭を下げた。まさかあのメッセージがアポの代わりだとは思っていなかったため、なんの社内調整もしていなかったのだ。
樹生さんは突然受付に現れ、『高塚です、次原呼んで』と受付担当に内線で申しつけ、一瞬社内を混乱させた。その彼が、「冗談冗談」と私に手を振る。
「もとはと言えば、悪いのは久人なんだから」
「俺がなんだって?」
そこへちょうど、久人さん当人が帰ってきた。
あまり寝ていないせいで、少し疲れて見えるほかは、普段と変わらない。さっそうと室内に入ってきて、デスクを回り込む。
「妻を振り回して、悪い夫だなって話だよ」
「俺も桃に振り回されてるし、おあいこ」
えー!
久人さんは引き出しからファイルを取り出すと、中をさっと確認して閉じ、そばでショックを受けている私ににっと笑いかけ、また出ていった。
本当に忙しいのだ。