「おはよう、朔」
ハナはすっきりした笑顔でそこにいる。
後ろから差し込む太陽なんて目じゃなくて。
いままで僕が見てきたどんな光よりも強く輝いている。
「おはよう、ハナ」
朔は一瞬驚いたように目を見開く。
だけど私が笑いかけるとすぐに目を細めて微笑み返してくれる。
その笑みは朝が来る前に私が会いたいと思ってた朔のもので。
「大丈夫。大丈夫」
ハナはそう言って力強い瞳で僕を見つめている。
「大丈夫。大丈夫」
朔はそう言って目尻の皺を深くする。
ああ。
やっぱりハナは変わらずハナだな、と思う。
うん。
やっぱり朔は朔のまんまだな、と思う。
さあ、
僕たちには、
私たちには、
話し合うべきことが山積みだ。
それを見守るように、カーテンの隙間からは冬の太陽が燦々と降り注いでいる。
それは暑いと錯覚するほどの強い光で……。
もうすぐ春が来るんだと気づかせれくれた。
本当に嫌だ。
ただでさえ日照時間が短いのに、空には灰色の雲がどんよりと居座って、僅かな日差しすら遮っている。
くだらない。
くだらない。
くだらない。
足を交互に踏み出す度に冷たい空気が体温を奪っていく。
吐く息が白く濁る。
横から冷たい風が吹きつけてきて身震いする。
長袖のインナーにワイシャツ。
その上からカーディガンとコートを重ねて、マフラーまで巻いているのにどうしてこんなに寒いんだ。