二〇一六年四月、私は高校教師となって、鎌倉に戻ってきた。
レトロな電車の窓から見渡した湘南の空には雲ひとつなく、一色刷りのような淡いブルーが広がっている。
晴れ上がった空の下、藍色の海には白波が立ち、濃い緑色の江ノ島がぽっかりと浮かぶ。
線路脇には、新芽のついたシロカシの木。窓を開けて手を伸ばせば、その柔らかな黄緑色の葉に触れられそうだ。
『次は~鵠(くげ)沼(ぬま)~、鵠沼~』
電車はもうすぐ、高校生の頃に私が住んでいた辺りにさしかかる。
祖母の家があった方角に目をやってみるが、今はマンションらしき建物に遮られて屋根も見えない。
この辺も変わったなぁ……。
四年の歳月を感じ、しみじみと感慨にひたった。