届くなら、あの日見た空をもう一度。


今日のブレンドを考えながらふとあるお客様の顔が浮かぶ。

あの子は絵を完成させることができただろうか。

何年も私の店に足を運んでくれた彼女に贈るであろうその絵を。

私も一度見てみたかったな。

うん。

今日は軽めの少し酸味のある配合にしよう。


「いらっしゃいませ」

「あの、二階の席空いてますか?」

「はい。ご案内いたします。こちらへどうぞ」

粉を挽きながら聞き覚えのある声に顔を上げると開店前に浮かんだ二人の姿が二階の席へと上がっていくのが見えた。

久しぶりに見る彼女のいきいきとした後ろ姿に。

緊張感を漂わせているまだ少し幼い背中に。

思わず目を細めてしまう。


「今日はお二人で来られたんですね」

「はい。サービス券、二枚頂いたので」

私まで嬉しくなるような満面の笑みが眩しい。

「コーヒを二つお願いします」

強さを秘めた瞳が頼もしく輝いている。

「コーヒをお二つですね。

かしこまりました。少々お待ちください」

今日のブレンドをこの二人は美味しいと感じてくれるだろうか。

「あ!すいません。

後、チーズケーキも二つお願いします」

「ケーキ?食うの?」

「ここのケーキは美味しいんだよ。

かなちゃん好きでしょう?チーズケーキ」

「……よく覚えてたな」

「ね!食べようよ!」

「すいません。

じゃあチーズケーキも二つお願いします」

「かしこまりました」

お昼を過ぎると太陽は明るさを増し、強い日差しをふんだんに降り注ぐ。


「ごちそうさまでした。

ここのコーヒーはいつも美味しいですけど今日のはいままでで一番好きな味でした」

「ケーキも、美味かったです」




ああ。

今日はなんて素晴らしい天気なのだろう。
目を通してくださった皆様。

この度は数多い作品の中から当作品を選び、ここまで読んでくださったこと、誠に感謝申し上げます。

この作品が皆様の光への道標のほんの一部にもなれましたら。

そう思い執筆に当たりました。

生きていると多くの苦しみに襲われることがあります。

涙もでないくらい心が枯れ果ててしまうときもあります。

でもー

それと同じだけ、それ以上に。

幸せなことも。

嬉しいことも。

楽しいことも。

必ずどこかにあると。

そして、それはいつだって自分の近くにあるんだと私は信じています。

そして、私にとっては読んでくださった皆様の存在がとてもとても大きな光となります。

ここまで読んでくださったこと、この作品を選んでくださったこと。

改めてお礼申し上げます。

本当に本当にありがとうございました。


武井 ゆひ

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