今思えば、もっと素直に『会いたい』と言えばよかったのかもしれない。
今すぐ会いたいって。
飲み会の後で遅くなってもいいから会いたいって。
せっかくの休みの日は、同僚と遊びに行ったりしないで私と会ってよ、って。
でも、私はどれ一つ言えなかった。
「お前は意地っ張りで天の邪鬼だからな」
独り言のような呟きが私を我に返らせた。
目を上げると、ケイがウィスキーのロックを飲みながら小さく笑った。
「だから、思ってること言えなかったんだろ。どうせカズを困らせたくないとか、めんどくさい女と思われたくないとか、そういうこと考えてさ」
その通り、と叫びたくなった。
そうだ、私はカズに嫌われたくなくて、普通の女みたいに束縛するようなことを言ったら幻滅されると思って、全部我慢していた。
「そう。言えなかったの。でもね、ある日、とうとう爆発しちゃって。『こんなに寂しくて辛い思いするくらいなら別れたい』って電話しちゃったの」
「ああ、言ってたな」
「そしたら、ごめん俺が悪かった気づかなくてごめん、とか言ってくれるだろうと思ってたのに……カズは『そっか、なら別れよう』って、それきり連絡も来なくなって」
「うん、うん」
「それでも私はさ、いつか『やっぱり俺はお前がいないとだめだ』ってカズが言ってくる日がくるだろうって思って待ってたの。それなのに……」
「うん」
「一年たって、やっと電話がかかってきたと思って喜んで出たら、『六月に結婚式するんだけど、来れるか?』って。どんなサプライズよって思ったけど、まさか他の女との結婚式だったとはね。笑えるわ、ほんと。あーあ、どうして私じゃだめだったんだろう……」
それは、カズの結婚を知ってから何度も自分の中で反芻した思いだった。
どうして、私じゃだめなんだろう。
どうしてカズは、私じゃだめだったんだろう。
そして今日も、綺麗なウエディングドレスに身を包まれて幸せそうに笑いながらカズの隣に寄り添う彼女を見て、やっぱり思ってしまった。
あそこに立つのが、どうして、私じゃだめなんだろう。
こんなにカズのことが好きなのに。
まだ、その顔を直視することすらできないくらい好きなのに。
今すぐ会いたいって。
飲み会の後で遅くなってもいいから会いたいって。
せっかくの休みの日は、同僚と遊びに行ったりしないで私と会ってよ、って。
でも、私はどれ一つ言えなかった。
「お前は意地っ張りで天の邪鬼だからな」
独り言のような呟きが私を我に返らせた。
目を上げると、ケイがウィスキーのロックを飲みながら小さく笑った。
「だから、思ってること言えなかったんだろ。どうせカズを困らせたくないとか、めんどくさい女と思われたくないとか、そういうこと考えてさ」
その通り、と叫びたくなった。
そうだ、私はカズに嫌われたくなくて、普通の女みたいに束縛するようなことを言ったら幻滅されると思って、全部我慢していた。
「そう。言えなかったの。でもね、ある日、とうとう爆発しちゃって。『こんなに寂しくて辛い思いするくらいなら別れたい』って電話しちゃったの」
「ああ、言ってたな」
「そしたら、ごめん俺が悪かった気づかなくてごめん、とか言ってくれるだろうと思ってたのに……カズは『そっか、なら別れよう』って、それきり連絡も来なくなって」
「うん、うん」
「それでも私はさ、いつか『やっぱり俺はお前がいないとだめだ』ってカズが言ってくる日がくるだろうって思って待ってたの。それなのに……」
「うん」
「一年たって、やっと電話がかかってきたと思って喜んで出たら、『六月に結婚式するんだけど、来れるか?』って。どんなサプライズよって思ったけど、まさか他の女との結婚式だったとはね。笑えるわ、ほんと。あーあ、どうして私じゃだめだったんだろう……」
それは、カズの結婚を知ってから何度も自分の中で反芻した思いだった。
どうして、私じゃだめなんだろう。
どうしてカズは、私じゃだめだったんだろう。
そして今日も、綺麗なウエディングドレスに身を包まれて幸せそうに笑いながらカズの隣に寄り添う彼女を見て、やっぱり思ってしまった。
あそこに立つのが、どうして、私じゃだめなんだろう。
こんなにカズのことが好きなのに。
まだ、その顔を直視することすらできないくらい好きなのに。