上級生の試合が終わると、上級生が休憩をしている間だけ一年がゴールを使える。


先輩達がコートから出るのと同時に、一年が一斉にゴールめがけてシュートを放った。

おいおい、ゴールはひとつしかないのに十三人全員でシュートしたら、そりゃ入らないだろ。


顧問はバスケの知識があまりないのか、練習を見にくることもほとんどないし、先輩は自分たちの練習で精一杯。

誰も指導する人がいないってのも、強くならない原因かもな。


そんなことを考えながら客観的に眺めていると、シュートをする輪から少し離れた所で修司がドリブルの練習をしていた。


なんとなく気になった俺は、修司に近づく。


「お前はシュートしないのか?」

「え?あぁ、だってまだ手の添え方さえ分からないし」

そうか、誰も指導してないもんな。


このバスケ部は、経験者にとっては自由に出来るからいいけど、初心者には辛い環境かもしれない。


「まずドリブルが出来なきゃ始まらないだろ?」


こいつは、どこまで真面目なんだ。

しかも……絶対良い奴だ。

そう確信した俺は、修司が持っていたボールを横から奪った。


「あのな、ドリブルも勿論大事だけど、考え方が極端なんだよ。ドリブルもやってパスもシュートも練習しなきゃ意味ないだろ」

「ああ、そうか」

「パスだって、ただ普通にこうやって投げたって駄目なんだ」

俺は持っていたボールをポーンと修司に向かって投げた。

そのボールを今度は修司が俺に投げ返す。