次の日、私達は早速毛糸を買うために出掛けることにした。
手芸屋には様々な色の毛糸が並んでいて、しかも糸の種類も豊富だ。
ずらっと並べられている毛糸を見て回るけど、編み物なんかしたことない私にはどれを使ったらいいのかサッパリ分からない。
「ていうかさ、香乃は編み物できるの?」
「やったことないよ。でも手袋を編みたいなって思ってから本買ったりネット見たりして勉強したから」
「へぇ~、凄い熱意だね」
きっとよっぽどその人のことが好きなんだ。好きな人の為に何かをするというのは凄く楽しいし、そういう気持ちなら私にも分かる。
「私も、やってみようかな……」
青い毛糸を持ったまま呟いた私の独り言に、香乃は気付いていない。
真剣な表情であれでもないこれでもないと毛糸を手に取って見ている香乃。
「よし、これに決めた」
香乃の両手には、黒と濃い青色の毛糸が乗せられていた。
私は咄嗟に自分が持っていた毛糸を棚に戻す。
「これ、どうかな?派手じゃなくて男の子っぽい色がいいかな?って思ったんだけど」
「うん、いいと思うよ」
「じゃー買って来るね」
香乃は嬉しそうに毛糸を持ってレジへ向かった。
私はもう一度、さっき手に取った毛糸を見つめる。
修司にあげるなら、絶対青の毛糸だな。
修司のバッシュが、青色だから。
だけど私に編み物なんかできるんだろうか。
正直自信ないけど、私も手袋を編んで『好きな人にあげたくて編んだ』って言いながら香乃に見せたら、きっと驚くよね。
香乃は器用だけど編み物の経験があるわけじゃないから、私にも頑張ればできるはず。
私は青と水色の毛糸を持ち、香乃が会計をしているレジから二つ横にあるレジで会計をした。
香乃は背中を向けていて気付いていない。
私が編み物なんて、驚いて目をまん丸くしてる香乃の顏が浮かんで、なんだか笑えてきた。