「えっ……好き、って、香乃に?」

「うん」

色白の顏がみるみるうちに赤くなっていくような気がした。


「ほ、ほんとに?」

「うん」


香乃にも、好きな人がいたんだ……。



「で、誰?」

「う~ん、内緒」

「なんで?そこまで言ったら教えてよ」


だけど香乃は、クッションに顔を埋めたままピクリとも動かない。



「どうした?」


香乃の肩に手を置いた瞬間、バッと顔を上げて大きな目を私に向けた。


「私ね、手袋を編もうと思って」

「てっ手袋?」

「うん。もうすぐクリスマスでしょ?だから……」


クリスマス……手袋を編んで、香乃は好きな人にあげるってこと?



「だからさ、手袋をちゃんと編めたら、そしたら奈々に言うから」

「分かった。気になるけど、そういうことなら楽しみにしてるよ」

「で、奈々の話は?」


「あぁ……私も、私もその時に話す」


ちゃんと言おう。香乃の好きな人を聞いた後、私も香乃にちゃんと自分の思いを話すんだ。



「そっか、分かった。今度買い物付き合ってよ、毛糸とか買いに行きたいし」

「勿論いいよ、いつにする?失敗したら困るし、早く買いに行った方がいいでしょ」

「失敗すること前提なの?ひどーい」


あの不自然な空気が嘘みたいに、私達は大声で笑い合った。

休みなのをいいことに夜中まで話をしたり、漫画を読んだり、久しぶりのお泊りは本当に楽しくて。


だから、忘れようと思った。



香乃が家に来る前まで、頭の中でくすぶっていたはずの思いを……。