『先生に聞いたら、他のクラスの奴も使うからガス台とかコンロは余ってないけど、フライパンなら沢山あるって』

「ほんとに?」

『ああ、でもガス台がないと……』

「私、今から家に行ってガスコンロ取ってくる!この時間じゃお店もやってないし、っていうかコンロって買うと結構高そうだから、取りに行く」

『奈々、大丈夫か?絶対重いし、他の奴に頼んだって……』

「大丈夫!毎日部活で鍛えてるし、修司は他の準備進めてて」


電話をしながら香乃の顔を見ると、香乃は笑顔で何度も頷いていた。


『分かった。なんかあったらすぐ電話しろよ!』


今日の為にクラスのみんなの役割を修司が先頭になって決めたんだ。飾りつけをする人、呼び込みする人、注文を取る人、それぞれちゃんと役割がある。


機械を調達するのは私の仕事の一つだった。だから最後までちゃんとやらなきゃ。


「香乃、私行ってくるね」

「待って、コンロ一台じゃ足りないでしょ?今家に電話してお母さんに用意してもらうから、うちからも一つ持って行って」

「ありがとう、じゃー行ってくる!私はもう大丈夫だから、気にしないでクラスの方頑張ってね」


香乃が私を落ち着かせてくれたから、香乃のお陰だ。

子供の頃からいつも私が香乃を助けていたけど、でも本当はいざという時に頼りになるのは香乃の方だった。



登校してくる生徒たちの波に逆らいながら、駅に向かって走った。

人を避けて走るのは得意だ。こんな時にバスケの経験が役に立つと思わなかったけど。


はぁはぁと息を切らしながら駅に着き、改札を抜けて再びダッシュで階段を駆け上がった。

額は汗が滲んでて、体中が熱を帯びたように熱い。


電車に乗っている時間がもどかしくて、走った方が早いんじゃないかと勘違いしてしまうくらいだった。