電車を降りて学校に向かっていると、丁度橋を渡ろうとしたところで修司からの着信があった。


「おはよどうしたの?」


『問題発生、あのな……』




電話を切った私は、一度立ちどまって頭の中を整理しようとなんとか心を落ち着かせた。


「奈々?どうかした?」

「どうしよう……」


ポップコーンの機械は二台頼んだはずなのに、一台しか来ていないと言う話だった。

文化祭の時期だからか当日しか借りられなくて、今朝先生が取りに行ってくれたようだけど、修司が学校に来たら一台しかなかったと。


修司が先生に確認したら、貸し出すのは一台だと聞いていますとお店の人に言われたらしい。

借りる為の連絡は私がした。でも私は確かに二台とお願いしたはず……。



「一台じゃ無理なの?」


「あの機械だと、四人分作るのに五分かかるの。作り立てで少し温かい方が美味しいからって、みんなで出来立てを出せるように決めて……だから二台ないと……」


じんわりと手に汗が滲みでてきて、言い表せない不安が胸を締め付けた。


「私が……」

「奈々、落ち着いて。もう一台借りられないの?」

私は香乃の言葉に俯きながら大きく首を振った。


余ってる機械は無いと言われたって、さっき修司が言ってた。

それに、ポップコーンの機械を近くで貸してくれるような所はない。

今からネットで検索して取りに行って、なんてしてたら絶対間に合わない。


「どうしよう……みんな、凄い頑張って準備して、私が部活で手伝えない時も……みんなは……」


さっき修司は、今から作り始めれば一台でも大丈夫だって言ったけど、それじゃー駄目なんだ。

色んな味が付いた出来立てのポップコーンを食べた時のみんなの笑顔を思い出すと、涙が溢れてきて……。