隣の病室を出て自分のベッドに戻った私は、テレビの前に置きっぱなしにしていたスマホを手に取る。


[部活終わって今帰ってきたよ。今日私は行けないけど、泣かないでね~]

フッと微笑みながら、泣いているウサギのスタンプを送信して布団の中に入る。


昨日、面会時間ギリギリまで病室にいて私の話を聞いてくれた香乃。

黙ったまま最後まで聞いた後、香乃は嬉しそうに微笑んだ。


信じてくれたのか夢を見たと思われたのかは分からないけど、『私も、奈々を助けてくれた幸野君にお礼を言いたい』と言った香乃の言葉が本当に嬉しかった。




ーーコンコン


テレビをつけようとした時部屋をノックされ、リモコンを持ったまま返事をした。


「はい」


ドアが開き、入ってきたのは……。


「修司……」


鞄を持ち制服姿の修司が、紙袋を片手に中に入ってきた。

部活帰りに寄ってくれたんだ。


「奈々、大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ。ごめんね、修司にまで心配かけて」

「謝るなよ、友達なんだからあたり前だろ」


友達……。

胸がキュッと痛むけど、私はパイプ椅子に座った修司を見つめる。


「退院はいつ頃できるんだ?」

「私はたいしたことないから、明日検査の結果聞いて大丈夫だったらすぐ退院になるって」

「そっか」

修司は安心したように目を細めて笑った。