ラスト10日間。
この仕事人間の僕だけど
なるべく残業を避けダッシュで家に帰る。

今日は特に早く帰らなければいけない日。
カレンダーには大きな大きな丸が付いてある。

「ご主人様。遅いっ!」
『おかえりなさい』じゃなくて『遅い』とお出迎え。
僕は着替えも許されず、スーツのまま玄関先で怒るスズメに凄い力で引っ張られてパソコンの前に座らされる。

「早く点けて下さい」

「スズメが先に立ち上げてもいいのに」

「スズメは機械に弱いんです。触って壊したら困るでしょう」

「ノートパソコンなんて簡単に壊れないって」

「どうでもいいから早くっ!」

きっと最後まで僕は怒られてる気がする。

四角い画面が明るくなり
大好きな海外ドラマ【ゲーム・オブ・スローンズ】の壁紙が浮かんでから、僕はひとつのアイコンをマウスで追う。

「いい?」
緊張を隠しきれない様子でスズメに聞くと

「覚悟はできてます」ってスズメは僕の後ろで言う、けどチラ見したらスズメは目をギュッと閉じていた。

「覚悟して目を閉じる?」不思議で聞くと「いいからっ!」ってまた怒られた。

だから僕はそのままメールをチェックする。

今日は公募に出した
例のファンタジー小説の最終審査。
10作品からラスト5作に残れるかどうか。

さぁどうだ。

編集部からメールが届いてるか

届いてないか。