「亀山さん」
「うん」
「それをこの私に聞きますか?ずいぶんですね」
冷たい声と態度が返ってきた。
やっぱり最低だったか。
「ごめん。忘れて。いや……ごめん」
我に返って失礼な発言を必死で謝るけど
「こんな失礼な事を聞いて『忘れろ』ですか?ずいぶんですね」
手厳しく言われてしまった。
「ごめんなさい。本当にすいません。失言」
焦って何度も謝る僕に、今度は笑う木之内さん。
「亀山さんって真面目ですよね。そこが好きです」
「木之内さん」
みんな仕事が忙しくて
僕達がこんな会話をしているとは思わないだろう。
僕と木之内さんの周りだけ
透明な壁を作っているようだ。
「好きな人に好きな人がいる……うーん。私にとってもリアルですね。そうだなぁ、頑張ってもダメなら忘れようと努力します。でも、そーゆーのって努力してもダメな時はダメなんですよ。だから時間が経つのを待つかなぁ」
木之内さんは恥ずかしそうに僕に言う。
「もっと素敵な男性を見つけるかもしれませんし。その時にならないとわかりませんが、私はプライドが高いので好きな人の前でグズグズしないで、いい女でいようとは思います。」
笑顔で語る木之内さんにつられて僕も笑う。
「……好きな人には笑っていて欲しいですよね」
「え?」
「本音の本音を言うと。その恋を終わらせて、もう一度だけチャンスが欲しいんだけど……まぁそれはいいとして。頑張って下さい」
木之内さんはサラリと言い残し
僕の目の前から去ってしまった。
深い意見をありがとう。