「これで悪い夢はバクさんが食べてくれます。もう大丈夫。近所のコンビニのお姉さんが教えてくれました」
スズメのテリトリーが広すぎる。
「あのお姉さん。私服が全身ヒョウ柄なんですよ」
そして豆知識も広い。
「さぁ寝ましょう。明日はゆっくりしてましょう。スズメも起こしません」
スズメは子供にするように、僕の布団をポンポンっと叩いた。
「ご主人様?」
「何?」
「事故に合った時、大きなお怪我はなかったんですか?」
「合ったと思う……一ヶ月ぐらい入院してたはずなんだけど、不思議にその時の記憶が一切ないんだ」
「そうなんですか」
「事故に合って、気付いたら親戚の家に住む準備をしていた」
「大変だったのですね。でも、もう大丈夫です。ご主人様、早く寝て下さい。いい夢見ましょう」
「スズメも早く寝て。もういいよ、ありがとう」
僕は早くスズメに休んでもらいたかったけど
スズメは僕を無視して
小さく唄を歌い出す。
それは前に聞いた事のある曲であり
とても懐かしくて
温かくて
心に沁みる唄で
僕はまた
それを聴きながら
涙を流して眠りについた。