「お片付けします。ご主人様はお風呂に入って下さい」

トボトボと台所に向かうスズメの腕を取り、僕は彼女を引き留めた。
振り返ったスズメは驚いて目を丸くする。

「スズメ……あの……」
僕は何を言おうとしてるのだろう。

素性も知らない女の子。
ひとりが好きな僕の世界に入り込み
『ゴミ捨て場で命を助けられた雀です』なんてワケわからない話をしている女の子。

にぎやかで喜怒哀楽が激しくて
僕をいつも怒ってる女の子。

早く出て行って欲しかったのに
今、僕は彼女を引き留めようとしている。

「スズメは帰る家はあるの?」

僕の質問に彼女はうつむく。

「もし家にまだ帰りたくないのなら、帰りずらいのなら、もう少しここに居てもいいんだよ」

語りは丁寧で優しいけど
エゴ丸出しの発言だ。

居てもいいんだよ……じゃなくて

ここに居てほしい……だろう。

「スズメ?」

僕の考えは甘かった。
彼女はいつも元気に働き
毎日楽しそうに笑顔を見せてくれたから

きっと僕がそう言えば
「はい」って言ってくれると思ってたのに


「スズメは期間限定の恩返しです」って

僕に言い残し

僕の手から離れて台所へ行ってしまった。