次の日
僕が会社に行くと
真っ青な顔をして木之内さんが僕の元に駆けてくる。
「亀山さん」
仕事で大きなミスでもしたかと、周りは焦って僕らに注目。
きっと昨夜の話だろう。
「ちょっと場所変えよう」
小声で彼女を隣の会議室に誘導。
ツーショットになっても
木之内さんは必死な顔で僕を見つめていた。
スズメに似てるな。
思わずふっと笑うと、木之内さんの顔も緊張が解けたよう。
「昨夜の事なんですけど、すいません。私、楽しくて、その、亀山さんとお食事が楽しくて浮かれてしまって飲み過ぎて……あの、何か言いませんでしたか私」
強気な女子の必死な様子は楽しい。
僕は意地悪く
とっても真剣な顔で彼女に迫る。
「覚えてないの?」
「はい」
「聞きたい?」
「え?いえ、あの。聞きたくないです。でも聞かなきゃいけないし……」
「『キスして』って言ったから、帰りのタクシーの中でキスした。そしてそのまま部屋に入って僕は君を……」
「きゃーーーー!」
木之内さんは耳をふさいでその場にうずくまる。
「木之内さん?」
「すいません。すいません。覚えてないんです。ごめんなさい」
「ごめんごめん。嘘」
「えっ?」
彼女の動きが止まる。