潤んだ目が僕を捕える。
強がりな態度のわりに不安そうな表情。
アンバランスで無防備で可愛らしい。
僕は静かに顔を近づけ
そっと触れるくらいのキスを彼女の額に重ねた。
「そこじゃなくて」
怒ったように言われてしまい、吹き出して笑う僕。
「亀山さんの鈍感」
「よく言われる」
「……おやすみなさい」
彼女は僕の腕の中で眠りに落ちる。
会社で見る
ガードの固さはどこへやら
木之内さんは安心したように目を閉じていた。
家庭環境なのかな
きっと木之内さんは子供の頃から愛されて育ち、今も家族に愛されている。
文句を言いながらも、社長である父親が大好きなんだろう。
こんなに綺麗で性格も可愛い社長令嬢が『好きになって下さい』なんて、僕にはもったいない言葉をかけてくれたのに、僕の心は揺れなかった。
本当に鈍感。
中岡に怒られる。
人を愛する事が怖い。
愛して
失うのが怖かった。