「認めてもらいたかったんです」

「うん」

「頑張ってるね……って」

「うん」

「一生懸命勉強しました。海外留学もしました。努力もしてるんです」

「うん」

「社長の娘としてじゃなくて、ひとりの人間として……亀山さん」

「ん?」

「……眠たい」

木之内さんは電池が切れたように、急に目を閉じテーブルに突っ伏した。

「ちょ!木之内さんっ!」

僕は慌てて支払いをして
崩れる木之内さんを抱きかかえながら、タクシーを拾って後部座席に乗り込んだ。

半分寝てる彼女を起こし
無理やり住所を聞き出して車を出してもらう。

品の良い蘭の香りと甘いワインの香りが混ざってる。

木之内さんは「かめやまさーん」って僕の名前を呼んで、いきなり抱きついてきた。

「うわっ」しか言葉が出ない。
どうすりゃいいんだ?

「亀山さん。ありがとうございます」
目を閉じながら彼女は言う。

「私、入社した時はギスギスで態度も悪くて、皆さんに嫌われてました。お弁当だってひとりで食べてたし」

「懐かしいね」

今は皆と仲良しで
仕事もデキて
しっかり課の一員として大切な戦力。