「本当に恥ずかしい」
ブツブツ言いながら頬をふくらます彼女は、スズメに似てる。
『寝るならソファじゃなくて、ベッドで寝て下さい』
目を細めてプリプリするスズメが目に浮かぶ。
「笑わないで下さい」
メニューを見ながら僕に言うので
「はいはい」って返事をすると
「『はい』は一度でいいんです」って言われてしまった。そこも似てる。
僕達は美味しいワインから始まり
セビチェという魚介のサラダ。
ビーフやチキン、海老やアボカドを細く切り
焼いたものを包んで食べるファヒータ。
鶏肉のトマト煮
ラストにはしっかりデザートのチーズケーキ。
美味しい料理を食べながら
話をして盛り上がる。
木之内さんは社長である父親と、兄ふたりと母親の5人家族。
末っ子の女の子という事で、家族には可愛がられ育つ。
女の子だけれど
自分としてはバリバリ働いて
父親の会社の右腕になるような存在になりたいと希望するが
父親と重役である兄達は『女性の幸せは結婚』という
昔ながらの固定観念があるらしくて
「前に別の会社で勤めてたのですが、兄が裏で手を回して、私の仕事は責任のない簡単なものばかりでした。仕事内容より裏で手を回されたのがムカついて、私は家を出てひとり暮らしを始めて会社を辞めました。そして中途採用試験を受けてここに入りました」
「お父さんとお兄さんが居る会社に?」
「はい。私だってやればデキるって、ひとりの社員として実力を見て欲しくて入社しました」
少し酔っているのか
木之内さんはいつもより声が大きくて、目が座ってる。