「本当にありがとうございます。あっ寝袋は持参しております」
彼女は背負ってきた大きなリュックから、雑誌一冊分を丸めたほどのコンパクトな寝袋を取り出した。

寝袋持参って
これは本格的な家出娘だ。怖っ!

「こっちの部屋使って」

狭いながらも2LDKのマンションなので、僕が趣味に使っているパソコン部屋に彼女を連れて行き案内する。

「本がいっぱいありますね」
本棚を見て感心したように彼女は言う。

本棚を見られるのは脳内を見られてるようで恥ずかしい。
無視してそこら辺を片付け
押入れから布団を探して床に乱暴に置いた。

「その薄っぺらい寝袋より、こっちの方がいいと思うから」

「ありがとうございます」

「バスタオルとかタオルもあるからシャワーも勝手に使っていいよ」

「ありがとうございます。これから三ヶ月間よろしくお願いいたします」

その返事はスルーします。
明日は追い出す!

「僕は朝は8時に出るので、あとは勝手にして鍵は玄関の郵便受けに入れて欲しい」
あまり関わりたくない。
僕は彼女と目を合わさずにパソコンを片付けて自分の寝室に移動させようとしていると

「まだ小説は書いてますか?」

って
ふいに言われて手が止まる。

「え?」

「ご主人様は小説家になるのが夢なのでしょう」

澄んだ目をして女の子はそう言った。