「このスズメの命に代えても、精一杯に恩を返します」

命に代えられても困るんだけど。

うーん困った。

つまり
僕はどこかで目を付けられたのだろう。

人が良さそうで
簡単に騙されやすいタイプとみて
家出娘が宿を借りに来たのだろう。

困ったなぁ。
彼女の顔が必死すぎるのが気になる。
このまま
警察に突き出すのも後味悪いし。
かといって
簡単に追い出せない雰囲気で……困った。

「うーん」
頭を悩ませていると

彼女は無言で僕の前に湯のみをうやうやしく差し出した。

【いまから ここから】

何が言いたいんだ!

「ごめん。やっぱり帰ってもらう」

勢いつけてイスを立つと
女の子はすぐさま床に正座し僕を見上げる。

小さいのに威圧感ありすぎ。

「三ヶ月間だけでいいんです。亀山さん……いえ、ご主人様を幸せにしたいんです。全力を尽くして頑張ります」

「でも雀さん」

「三ヶ月間だけ時間を下さいっ!」

女の子にそう言われるとダメって言えない自分の弱さ。

にんげんだもの……しかたない。

「帰る場所が本当にないの?」

そう聞くとコクリとうなずく。

「じゃ今夜は泊まっていいよ。あとは明日考えよう」

「ありがとうございますご主人様」

「亀山さんでいいよ」

明日になったらすぐ帰ってもらうから。
あぁ
どうしてこんなに人が良いんだろう……じゃなくてバカなんだろう。