「本当に美味しかったです」
「またお願いします」
「亀山さん。職替えしたら?カフェとか開いたらいいのに」
「昔ながらのお弁当屋さんが似合うかも」
勝手な事ばかり言われたけど
木之内さんは笑顔を見せてくれて、僕の足を蹴って合図を送る事もなく、女子社員の一員に馴染んていた。
歓迎会もやっぱりやろうって話にもなり
明日から彼女は社食で食べるような気がする。
よかったよかった。
まだ盛り上がる木之内さんを含む女子達を残し、僕と中岡は先に席を立つ。
「亀ちゃんが誘ったの?」
「ん?……うん」
「やるじゃん」
中岡が僕の背中を強く叩く。痛いって。
「亀ちゃんさー、なんか変わったよな」
廊下を歩きながら中岡に言われた。
「弁当男子になってから、いい意味でおせっかいになってる」
鋭い指摘。
自分では思わないけど
もしそうなら
スズメに似てきたのかもしれない。背筋がゾクッとした。
「前なら人と関わるのが苦手でひとりでコツコツタイプだったけど、今は明るくなったっつーか……それ以上進化すると俺より人気出るから遠慮しろ」
「おい」
「これマジ。でも俺は今のお前の方が好き」
色気のある顔でそう言われた。
チャラく見えても洞察力が鋭くて
仕事のデキる中岡君。
お褒めにあずかり光栄です。