すると突然
小会議室の扉が開いてご本人の木之内さんが現れた。
僕と実の父親である社長のツーショットを見て驚く。
社長は憧れの人に会ったような
嬉しくて愛しくて恥ずかしそうな顔をして、木之内さんを見たけれど
木之内さんは冷たい表情のまま
社長に一礼して足早に去って行った。
たった3秒ほどの出来事。
社長のテンションが一気に下がる。
「誰に似たのか頑固で意地っ張りで強気で」
廊下の真ん中を堂々と歩く後姿を見て社長が呟く。
「でも本当は不器用で優しくて……いい子なんだよ」
社長の言葉には愛情がこもっていた。
木之内さんは社長とは合わないようだけど
社長はこんなにも木之内さんの事を愛してる。
親の愛は無償で大きい。
反発しても
親からの愛情をもらっているなんて
僕はただ
うらやましいの一言につきる。
僕にはもう
無償の愛情をかけてくれる人はいないのだから……。