振り返ると満面の笑みのスズメが立っていた。
「なっ……な、何を?なっ……なんで」
「何?って仕事ですよ」
当然って顔でスズメは胸を張る。
彼女は水色の作業服を着てキャスケットを被りモップを持っていた。
これは社内でよく見かける
お掃除のおばちゃんスタイル。
そして首から下げているパスケースを僕に見せた。
【共同美装サービス 臨時職員 小畑 鈴芽(オバタ スズメ)】
「スズメのお仕事です」
えっへん。どうだ。驚いたか。
そんな顔で僕を見る。
驚いたってもんじゃないだろう。
どうしてうちの会社のお掃除サービスに?
あまりにも自然すぎて似合いすぎるその姿を二度見。
「ご主人様を見守るのもスズメの仕事です。さっきの人がご主人様の彼女ですか?」
「いや違う違う。絶対違う」
「綺麗な人でしたよ」
「綺麗でも身分が違う。彼女はここの社長のご令嬢で雲の上の人だよ」
別の意味で別世界だよな。
話しても会話になってないし。
どうしてあぁなんだろう。もう少し協調性があってもいいのに。力が入り過ぎてる。
でも、その力の入れ方は僕から見れば嫌味はなく
ただ不器用なだけに見えた。
「ご主人様」
スズメは持っていたモップを観葉植物に預け僕の手を取る。
「愛があれば身分差なんて。このスズメが必ず、さっきの人とご主人様をつがいにさせますから」
「はぁ?」
「このスズメにお任せをっ!」
酔ってる酔ってる。自分に酔ってる!!
カンベンしてくれっ!