「木之内さん?」
今日も髪をひとつにまとめ、隙のないスーツ姿。
僕が声をかけると
表情のない綺麗な顔で振り返る。
なるほど鉄仮面。
「亀山さん。いつも会議ってあんな感じなんですか?」
声をかけた僕にツカツカと急接近。
「会議ってあんなダラダラですか?活気がないんですか?」
「えーっと」
迫力で負けそう。
広い廊下の真ん中で僕に喰いつく木之内さんを手招きし、観葉植物の陰に移動。
「一回目は様子見だから。人の考えを聞きながら……」
「ツィッターに頼り過ぎた戦略です。もう少し中味を考えなきゃ、パッケージだって弱いです」
「それはこれからの話で……」
「遅すぎます」
怒られてます僕。
「えーっとですね。何て言えばいいのかな」
資料展開は上手いけど、こんな感じで女性に怒られると上手く説明できない僕。
「結果を出さなきゃ意味はありません」
僕を見上げてキッとにらむ。
強気だなぁ。うちのスズメみたい。
『ご主人様っ!』って、スズメの声が遠くから聞こえそう。
思い出して頬を緩めると
木之内さんはバカにされたと思ったのか、余計怒り出した。
「亀山さんまで私をバカにして」
「バカにしてないよ」
「もういいです!」
木之内さんは大きな声を出し、僕の目の前から去ってしまった。
大きなお世話だったか。
まだ何日か一緒に過ごしてないのに
スズメの影響を受けてしまってる。
『ご主人様ぁ』
遠くから僕を呼ぶ声まで聞こえるし。
『ご主人様ー!』
後ろからしっかり聞こえるのはなぜだろう。
「ご主人様。無視しないで下さい!」
それは現実だから。
うわっ!スズメっ!スズメの声っ?